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接続詞を認めない?

石黒圭さんの『文章は接続詞で決まる』(光文社新書)には、私にとっては目から鱗の話題が多い。

いくつか紹介しよう。

「そもそも接続詞という品詞を認めない立場もあります。」

え? 何それ?
文章も会話も接続詞なしでは成り立たないでしょうに。

ところが、そもそも品詞というものは一文の枠をはみ出して文と文を結ぶようなものは本来想定されていない、と。
副詞との境界線も曖昧だし、指示詞との境界線も曖昧だという。

また、

「ですから、私は、高校入試や大学入試、法科大学院の適性試験などで見られる、接続詞を選ばせる問題があまり好きではありません。」
「じつは、論理学は接続詞が苦手です。」

はあ? 文章は論理じゃあないの? 論理をしっかり追って行けば自ずから正解が導かれるのじゃあないの?
国語の専門家が何を言い出すのか。

石黒先生曰く、「接続詞の持っている論理は論理学のような客観的論理ではなく、二者関係の背後にある論理をどう読み解くかを示唆する解釈の論理なのです。」

なるほど。
読み手の解釈によっては設問での接続詞の選び方も変わってくる、ということか。
接続詞選択問題では、解答解説を読んでもいまひとつしっくり行かないことがある。これは、至極当然のことだったのか。正しく解釈すれば誰でも同じところに到達できるという客観的論理ではない。個人差の生じる、解釈の論理。

ここから私達は何を学ぶべきか。

国語試験問題の作成を始める時を考えてみよう。
まず作成者の目の前には完成した文章が存在する。
その完成品に手を加えて問題を作るわけだが、作成者の脇には常にもともとの完成品が「正解」として存在している。
その完成品に引きずられる形で問題作成が行われている恐れがある、ということだ。だって、手を加える前の作者の文章が「正解」に決まっているのだから。
言ってみれば、様々な解釈の広がり具合については、問題作成者自身が一番狭いということになる。一つの方向しか見えていないと言ってもよい。「正解」が脇にあるから。
ところが、解答する方は様々な解釈の広がりを想定して解くから、迷うことになる。
これに近いことは、以前から石原千秋という学者も言及している。

問題作成者を非難しているのではない。ただ、接続詞選択問題を作るのならば、正解以外は「絶対にありえない」ような選択肢にして欲しい。それでは試験にはならないか。
そういえば、麻布高校の国語の授業では、接続詞を選ぶ問題の解説などはあまりやらないようだ。あくまでも内容理解重視。参考にすべき情報だ。

国語に限らないことだが、定着した「正解」に引きずられて思考が固定化することだけは避けたいものだ。
学問の本来あるべき姿勢からは正反対の方向なのだから。


もうひとつの学ぶべきこと。

接続詞ひとつとってみても、大学の先生の話は面白いということ。知的刺激に満ちているということ。もっと言えば、自由であり、広がりがあり、それでいて厳密な議論をしているということ。
逆に言うと、高校までの「常識」はあくまで高校までのものであり、限られた時間で学ぶように「選択され」「整理され」ているものだということ。高校までに学ぶことは基礎であり基本であることには違いない。しかし、それは過去でも、未来でも変わらないものなどではないかもしれないのだ。

実は、大学ではそういうことを教えてくれる場だ。

学問とは自由であり、広がりがあり、そして何よりも「常識を疑う」ことに躊躇がない。高校までの先生が「これは接続詞だ、しっかり覚えよ」と教えてくれた一つの品詞が、学問的にはその存在を認められないかもしれなかったり、まだまだ議論の余地があったりする。その事実や、学問研究の途中経過、つまり、最先端の一番ホットな場所を見せてくれる場が大学なのだ。

高校までは常識を教えてくれる。大学では常識を疑うことを教えてくれる。

受験というものがある以上、中学、高校の先生方が固定的に教えるのはある程度仕方ないことだ。塾講師の私にしても同じ。

しかし、だからと言って、多数の解釈が可能な問題について、解答に引っ張られて作者の「正解」を生徒に押し付けるようなことだけは避けたい。そんなことでは生徒達は迷いを深めるだけだから。そして、指導者もその成長を止めることにもなるのだから。

そういえば、形容動詞を認めない学者もいるということ。中学、高校の先生もそのような話題に触れることくらいはしても良いのではないか。このような議論を理解し、ついて行ける生徒は沢山いるのだから。そして、そこから日本語の面白さに魅かれる人も出て来るだろうから。

プロフィール

齊藤塾塾長 齊藤茂

Author:齊藤塾塾長 齊藤茂
渋川高校卒業後、代々木ゼミナール(教務課)に3年半勤務。4年目の9月より浪人生活を送り、翌年4月に群馬大学教育学部に入学。卒業後、藤岡市、前橋市の大手進学塾にて前高、前女、高高、高女進学コース、附属中クラスなどを担当。平成9年に出身地の東吾妻町矢倉にて齊藤塾を開塾。以来トップ校受験生の指導にあたる。

2019年合格実績
前橋高校1名、前橋女子高校1名、高崎高校2名、高崎女子高校2名、群馬高専2名、新潟大歯学部1名、中央中等1名(その他・過年度分は下のホームページからどうぞ)

* お問い合わせは下記問い合わせバナーからどうぞ。
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