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ある弔辞

私は、父親が早くに亡くなったため、本来なら父が出るべき葬儀、告別式に父の代りに参列することが多かった。

父親が世話になった人の葬儀。
その大半は、私にとってはその遺影が初対面ということになった。

生前、一度も会ったこともない人の葬儀に参列するのは、場違い感を禁じ得なかった。
涙する遺族に深々と頭を下げてはみるが、何等かの感慨がこみあげてくるわけもなく、何とかしてその場にふさわしい気持ちになれないものかと、ぎこちない努力をしたものだった。

そんな葬儀のひとつでのお話。
老人ホームで亡くなったその方は、93歳の天命を全うされたとのこと。
葬儀屋さんのスタッフが司会。2、3の生前でのエピソードとともに、静かに亡くなったことを紹介してくれた。

読経が終わり、告別式へと式は流れてゆく。

「弔辞をご用意された方はいらっしゃいませんか」
形式的な司会者の案内。

弔辞の用意などあるはずもない。

ところが、だ。

「はい!」

最前列に座っていた一人の若者が立ち上がったではないか。
彼が弔辞を読みあげ始めた。

弔辞から分かったこと。

彼は亡くなった方が入所していた老人ホームのスタッフだということ。
亡くなった方は、93年の人生の最後の半年だけその老人ホームで生活したこと。
老人は人気者でスタッフの皆さんから愛されていたこと。
スタッフの皆がその死を悼んでいること。
若者は、たった半年ではなく、もっともっと長くその老人と一緒の時間を過ごしたかった、と大粒の涙を流しながら弔辞を読み進めたのだった。

亡くなった方が、90年以上、どんな人生を歩まれたか。
私は、司会者の紹介してくれた断片しか知らない。
しかし、長い長い人生の最後の半年間は周りの人達に愛されて、幸せな時間を過ごしたことは間違いない。

私にとっては、忘れ得ぬ弔辞となっている。
プロフィール

齊藤塾塾長 齊藤茂

Author:齊藤塾塾長 齊藤茂
渋川高校卒業後、代々木ゼミナール(教務課)に3年半勤務。4年目の9月より浪人生活を送り、翌年4月に群馬大学教育学部に入学。卒業後、藤岡市、前橋市の大手進学塾にて前高、前女、高高、高女進学コース、附属中クラスなどを担当。平成9年に出身地の東吾妻町矢倉にて齊藤塾を開塾。以来トップ校受験生の指導にあたる。

2019年合格実績
前橋高校1名、前橋女子高校1名、高崎高校2名、高崎女子高校2名、群馬高専2名、新潟大歯学部1名、中央中等1名(その他・過年度分は下のホームページからどうぞ)

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