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少年兵、その2

(昨日の続きです。)

上官は言った。
「『我こそは』という度胸ある者は手を上げろ!」

誰も手を上げなかった。
「度胸のない奴らだ!それなら、皆目をつむれ。いいか。もう一度聞こう。明日の出撃に我こそは参加したいという者は、目をつむったまま手を上げろ」

目をつむっている少年の耳に、バーン、バーンという音が聞こえてきた。薄目を開けて見てみた。少し目を開けた者が殴られる音だった。慌てて目をつむり直した。

一人も名乗り出る者はいなかった。
結局、指名されることになった。

整列している兵士の前から選ばれた者の名前が順に呼ばれた。
ひとり、また、ひとり。命の選別。
少年の前の者が名前を呼ばれた。少年は覚悟した。
だがなぜか、少年の名前は呼ばれなかった。
「今日は」呼ばれなかった、というだけのことなのだが。
生きながらえる日が一日、二日違うというだけの話。

その日選ばれた者にはご馳走が振る舞われた。
誰一人口をつける者はいなかった。
唇が真っ蒼だった。

彼等の船も出撃し、はやりその夜のうちに通信が途絶えた。

少年が選ばれたのは最後だった。
残った全員が出撃ということになった。
もとより、生きて故郷に帰れるとは思っていなかったのだから、少年は淡々としていた。
出撃前に故郷に向かって礼をしろと言われた。
群馬の方角などわからないので、富士山に挨拶した。
一人の上官が聞いてきた。
「キサマの故郷はどこだ」
「はい、群馬であります」
「バカ者。群馬はそっちじゃあなあい。こちらに礼をしろ」
「はい、有難うございます」

ところが、少年は生きて群馬に帰れることになる。

(また、書きます。)



プロフィール

齊藤塾塾長 齊藤茂

Author:齊藤塾塾長 齊藤茂
渋川高校卒業後、代々木ゼミナール(教務課)に3年半勤務。4年目の9月より浪人生活を送り、翌年4月に群馬大学教育学部に入学。卒業後、藤岡市、前橋市の大手進学塾にて前高、前女、高高、高女進学コース、附属中クラスなどを担当。平成9年に出身地の東吾妻町矢倉にて齊藤塾を開塾。以来トップ校受験生の指導にあたる。

齊藤塾合格実績・・・前高、前女、高高、高女、高専、渋高、渋女、高経附、佐久長聖中、中央中等、樹徳中、埼玉大、新潟大、群馬大、静岡大、高等工科他

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