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体が溶けた蚕

蚕の体は溶けることがある。

気持ち悪い書き出しで申し訳ない。でも、本当のことなのだから仕方ない。
これは養蚕の経験のある方にとっては当たり前のことだろう。私の家は農家だったから、養蚕の手伝いをよくさせられた。だから、子供の頃は毎年普通に目撃していた。

溶けた蚕のことを「たれこ」という。中身が溶けてたれてくるからそう呼ぶようになったのだろうか。中身が黒くなって出てきてしまう。白い蚕が黒くなる。
塾ブログがオカルトになってきて申し訳ない。あまり細かい描写は如何かと思う。ただ、今日は最初に是非気持ち悪い思いをして欲しかったのだ。実際、気持ち悪いものだから。現実は現実として直視することも必要だ。

何故、こんな話をするのかというと。

どんな蚕が「たれこ」になるかを伝えたかったからだ。

蚕も沢山飼っていると途中で病気になるものも出てくる。それがひとつのタイプ。
もう一つのタイプが、今日のテーマ。
繭を作る段階になっているのに、繭を作れずに「たれこ」になるものがいるのだ。

白かった蚕の体が金色に透き通ってくると桑の葉を食べなくなる。繭を作る時期になったのだ。そうなった蚕は段ボールでできた小部屋の集まり(「まぶし」という)の上に乗せられる。乾いた場所に乗せられると、蚕は口から糸を吐いたりしながら、沢山ある小部屋の中から気に入った小部屋を選んで中に入り、そこで糸を張りめぐらせながら徐々に繭の楕円形の形を作ってゆく。内側からせっせと糸を張っている様子は、しばらくは外からも見える。吐いた糸の分だけ蚕自身は小さくなってゆく。そして、繭の壁が厚くなり中身の蚕は外からは徐々に見えなくなってくるが、まだシルエットがせっせと動いているのがわかる。そして、見えなくなってしばらくしてから中で蛹(さなぎ)になるようだ。これが、大半の自然な蚕の行動だ。

ところが、そうでないものがいるのだ。

小部屋に入って繭を作り始めるのだが、何が気に食わないのか途中まで作った繭に穴を開けて出てきてしまう。そして、別の小部屋に入って新しい繭を一から作り始める。そこで、繭を完成させることもある。最初、途中まで作った繭のために糸をだいぶ使ってしまっているので、他よりも小さな繭になる。それでも、繭を作るだけまだましだ。二番目の小部屋もなぜか気に食わないと見えて、また出てきてしまうものもいる。そんなことを繰り返しているうちに、体力を使い果たし、繭一つ分の糸を無駄に吐いてしまって、ほとんど体に糸が残っていない状態の蚕はどうなるか。

そう、「たれこ」になる。体力を使い果たすと蚕は死ぬ。死んで腐敗した蚕は中身が黒い水のようになる。皮膚も破れて中身がとろっと出てきてしまう。私達はこれを「溶けた」と表現した。

私達人間からは、どの小部屋もほとんど同じにしか見えない。同じ場所を行ったり来たりしながら、結局最初の場所に繭を作るものもいる。まあ、迷うことはあるだろう。蚕にだって個性はある。

繭を作るべき小部屋が決まらず何度も作り替えているうちに、糸がなくなり自らは「たれこ」になって「溶けて」しまう哀れな蚕。
周りの蚕はとっくに白く輝く繭を作って中で静かに眠っている。成虫となる夢を見ながら眠っている蛹たち。
その小部屋の端っこの方で黒く溶けた「たれこ」。

白く輝く繭と黒く溶けた「たれこ」。あまりにも対照的。
一匹の蚕の体にある糸の量は有限だ。
「たれこ」はどこで間違ったのか。「覚悟」ができなかったからなのか。

私が「たれこ」のことを時々思い出してしまうのは何故だろう。

いえいえ、あくまでも蚕のお話。
人間のお話ではありませんよ。勿論。


プロフィール

齊藤塾塾長 齊藤茂

Author:齊藤塾塾長 齊藤茂
渋川高校卒業後、代々木ゼミナール(教務課)に3年半勤務。4年目の9月より浪人生活を送り、翌年4月に群馬大学教育学部に入学。卒業後、藤岡市、前橋市の大手進学塾にて前高、前女、高高、高女進学コース、附属中クラスなどを担当。平成9年に出身地の東吾妻町矢倉にて齊藤塾を開塾。以来トップ校受験生の指導にあたる。

2019年合格実績
前橋高校1名、前橋女子高校1名、高崎高校2名、高崎女子高校2名、群馬高専2名、新潟大歯学部1名、中央中等1名(その他・過年度分は下のホームページからどうぞ)

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